プレゼント

 彼女を驚かせるプレゼントを用意するのが、最近のおれの楽しみになりつつある。
 といっても、そうそう頻繁に贈っていては新鮮味にかけるので、なにかしら理由があるときに限られるが。
 ただただ手渡しするよりも、さりげなくどこかにおいておくことで、彼女に見つけてもらえるのか、見つけたらどのような反応をするのかを楽しむほうがいい。考えて、その瞬間を待ちわびるのが、楽しいのだ。もちろん、彼女の驚き喜ぶ顔が何よりの報酬である。
 さて、今日は彼女がうちに来た日から1ヶ月になる。
 夕食を作ってくれている間に、彼女の部屋のテーブルに赤いバラを一輪飾り、カードを添えておいた。
 何事もなく過ごす夕食のときも、その後のお茶の時間も、おれはずっと考えていた。なんといってくれるだろう、と。
 やがて、就寝の時間が近づいてくる。彼女は自室に戻って着替えを取ってくるとおれのそばを離れた。
 さあ、今頃花を見つけ、カードを手に取っているころだろう。
 そして、今日が何の日であるかを確認して、ドアを開けて走ってくるに違いない。
 想像通り、足音が近づいてくる。
 ドアを開けて駆け込んできた。彼女はおれに飛びついてきて、しっかりと体を抱きしめてくる。
「素敵な花をありがとう。あなた」
 おれの胸に顔をうずめて、恥ずかしそうに言う。
「喜んでもらえて、うれしいよ」
 彼女の嬉しそうな顔をそっとこちらに向かせて、優しくキスをした。

 翌日、会社について執務室に入ると、机の上に見慣れないものがある。写真立てのようだ。
 椅子の側に回って見ると、おれたちの結婚式の写真だった。
 彼女が友人からもらった写真には、とても嬉しそうなおれ達の顔。
 彼女からの、プレゼントか。
 結婚しても、まだ同じ職場で働く彼女は、そういえば今朝は「用事があるから」と、おれよりも少し早く出かけたな。
 自然と顔がほころぶのが、自分でも判る。
「この笑顔のために」
 おれはつぶやいて席に着く。今日から、ますます仕事に張り合いがでそうだ。
 さて、家に帰ったら、なんと礼を言おうか。
 そう考えるのも、楽しいものだと知ったプレゼントだった。

Fin.

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あとがき

 この作品は、「読み物.net」さまの企画小説に参加させていただいています。
 企画はこちら。他の方の作品も是非どうぞ。
 もともと、ネットの物書き友人さまへの誕生日プレゼントSSでしたが、こういった形で公開する許可をいただいて、ちょっと書き直してUPさせていただきました。
 このお話の主人公とその奥様は、わたしとお友達の、それぞれの小説のキャラクターなのです。
 名前を明かしてもいいのですが、遠い将来のネタバレになるので、今は伏せておきます。一部の方はご存知だと思いますが(笑)。

 今までの中で一番短い小説の記録を更新しました。「この世に悪がある限り」を書いたときは、これ以上短いのは無理だと思っていたのですが、書けるものなのですね。びっくりです。

 では、また次の作品で。

2006年10月20日

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