委員長がわたしを好き?

 家に帰って、さっこちゃんに助けを求めた。
『明日って空いてる?』
『午後は空いてるよ。遊ぶ?』
『ってか、相談乗ってほしいことがあったりする』
『りょーかい。お昼食べたらそっちいこっか』
 お願いマークを送信して、スマフォを机に置いて、ベッドにぽんと横になった。
 さっこちゃん、なんて言うかな。
 まさかこんなに早くに恋愛ごとで相談することになるとは思わなかったよ。
「ぼくは牧野さんのことが好きだから!」
 冴羽くんの言葉が、真剣な顔と声が頭の中でぐるぐるする。
 ドキドキする。
 でも、わたし、冴羽くんをどう思ってるのか、自分でも判らない。
 ごろごろと寝がえりをうって、なかなか寝付けなかった。
 そして次の日のお昼、寝不足状態でさっこちゃんを迎えた。
「愛良ちゃんの部屋久しぶりー。やっぱうちとあんまり変わんないぐらい、女の子っぽくない部屋だね」
「あはは。その節はシツレイしました」
「いえいえ。すっごい女の子してる部屋って、実は落ち着かないってか、もぞもぞするって感じしない?」
「あ、判るそれ」
 さっこちゃんもわたしも、そういうのとは縁遠いよね。さすがはコアなアクション映画好き同士だよね。
 何かと好みとか感覚とかが似てるわたしたち。それでもってさっこちゃんはわたしより大人なところがある。だからこそ、さっこちゃんならどうすればいいのか、教えてくれると思えるんだ。
 ジュースとおやつを出して、ちょっとだけ他愛ない話をして、さて、どうやって切りだそうかって思ってたら。
「で、相談したいことって?」
 いきなり本題に入られてドキッとしたけど、聞いてくれてちょっとほっとした。
「実は……。好きって言われちゃって……」
「え? 誰に?」
 さっこちゃん驚いてる。ってか説明省きすぎだわたし。
「冴羽くん」
「えっ? 言ったんだ? うわー、意外……」
 もっとすごく驚かれるかと思ってたけど、意外なのは同じなんだね。
「でしょ? もうびっくりだよ。全然そんなふうに考えてなかったから」
「いや、冴羽くんが愛良ちゃん好きなのは前から気づいてたけど」
「そうなん!?」
「ほぼみんな気づいてるって」
 当然みたいに言われてしまった。
「じゃあ何が意外なのさ」
「冴羽くんが行動に出たこと。あそこまでおおっぴらにクラスの子らにからかわれたから、ますます言いだせないんじゃないかなって思ってた」
 あぁ、それは判る。
「――で、愛良ちゃんはどうするの」
「どうする、って、それが判らないから相談してるんだよ」
「そうだね。じゃあ、愛良ちゃんは冴羽くんをどう思う? いろいろ考えることはあるかもしれないけど、そういうの抜きにして」
 冴羽くんのことを好きかどうか、ってことだよね。
 正直、それもよく判らない。
 冴羽くんの性格はちょっと頼りないというか、勉強やクラスの仕事はできるけどなんとなく弱そうなイメージだったけど、夢見の決意をする冴羽くんはかっこよかったし、好きって言われて、全然嬉しくないわけでもなかった。
 でもだからって、わたし、冴羽くんのことを好きって言えるほどじゃないと思うんだよね。
 そんな感じのことを、もちろん夢のことは話さずに、さっこちゃんに伝えた。
「だったら、まずそこからじゃないかな。愛良ちゃんの中で冴羽くんの位置づけっていうか、ぶっちゃけ、付き合ってもいい男の子だって思ったらそうしたらいいし、ちょっと彼氏としてはなぁ、って思ったら断ったらいいんだよ」
「それで、いいのかな。いつになるのかも判らないのに、冴羽くんのこと振りまわしちゃったりしないかな。それにさんざん待たせて、やっぱり無理ーってなったら悪いっていうか……」
 いくらわたしのことを好きって言ってくれてるからって、そういうことになっちゃったらいけないと思うんだ。
「愛良ちゃん、優しいなぁ。大丈夫だよ。そういうふうに心配してる間はきっと、冴羽くん、待っててくれると思うし、愛良ちゃんの出した答えは尊重してくれると思うよ」
 さっこちゃんが頭をよしよししてくれた。
 ちょっと気が楽になった。
 初めての事だらけで、どうしようどうしようばっかり思ってたけど、そっか、気持ちが固まるまで、待っててもらっていいんだね。

 夏休みの最後の方で、さっこちゃんが気をまわしてくれて、クラスのみんなとプールとか遊園地に行くことになった。
 もちろんそこには冴羽くんも混じってたりする。他の男の子達は言うまでもなく、さっこちゃん狙いなんだけどね。
 女子は、わたし達グループ四人、プラス、女子委員長の桂さん。男子が五人だから数合わせ探してたら、なぜか桂さんが来た。
 普段から仲良くしてたわけじゃないけど、どうしてか混ぜてって言ってきたみたい。ヒマだったのかな。
 他の子達には、冴羽くんに告《コク》られた話してない。変に意識されても困るし。
 だからプールの時は男女入り乱れて気軽に遊んでたんだけど。
 遊園地で、誰が誰とどのアトラクションに乗るかで、結構いろいろある。
 せっかく男の子と女の子で数が同じなんだから、って男女ペアにしたがる子が多すぎる。
 男子が、さっこちゃん狙いなのは見え見えだけど、なんで女の子達まで? 誰かこの中に好きな子いるのかな? それともノリだけ?
 一番意外なのは、桂さんが結構ノリノリだってこと。今まではツンとしたお嬢様みたいな雰囲気の子だと思ってたけど、それは学校でだけのことなのかな。いつも学校でポツンぎみなのも気にしてなさそうだったけど、本当はこうやって遊びたかったとか。
 桂さんって、さっこちゃんとは違うタイプの美人さんで、周りがなにしてようとわたしは関係ないわ、って感じでみんなから距離あったけど、これからは見方が変わりそう。
 周りはいろいろやってるみたいだけど、わたしは誰が隣にこようと、アトラクション楽しんだ。冴羽くんとも一度一緒になったけど、後になって気づいたけど別に意識することはなかった。ちょっと、ほっとした。
 最後に観覧車乗ろうってことになって、ふた組に分かれて乗った。
 わたしは、桂さんと男の子三人の組になった。
 ゴンドラが、ゆっくり登っていく中、予想はしてたけど冴羽くんの話になった。
「牧野は、冴羽のことどう思ってんだ?」
「ほんとに冴羽が牧野のこと好きだって全然気づいてなかったのか?」
「うん、全然意識してなかった。まさか自分のことを好きになってくれる子なんていないって思ってたし」
「なんで? 牧野ってわりとモテる要素持ってると思うけど?」
 はい? なんで? わたし全然女の子らしくないよ?
 きょとんと首をかしげたら、「すっげぇ、ほんとに無自覚」って笑われた。
「牧野って勉強も運動もできる方だし、明るいしさ」
「かわいいタイプって感じで、話しやすいし」
「超モテの青井さんがそばにいるから目立ちにくいってのもあるのかもな」
 さっこちゃんは「さん」づけなのね。そこに扱いの違いが見えるよ。
「つまり、さっこちゃんのおこぼれってことだよね。判ってるけど」
「いやいや、そういう意味じゃなくて」
「あんた達も、さっこちゃん狙いでしょ?」
「そりゃぁ……、いや、でも冴羽は違うからっ!」
 デレっとした後に、慌ててフォローしているあたりが、ちょっと可愛い。
「で? 牧野は冴羽のことは?」
 この答えが一番聞きたいんだろうな。もしかしたら今頃、女の子達が冴羽くんをこうやって質問攻めにしてたりして。
「正直言って、どうもこうも、別にフツーにクラスメイトだと思ってるよ」
 男の子達が、はあぁっ、てため息ついた。
「今んとこ脈なしかぁ」
「今はね。この先、どうなるかは判らないよ。わたしが誰を好きになるのか、わたしにも判らないし、それは冴羽くんだってそうだよ。今はわたしのこと好きって言ってくれてるのかもしれないけど、違う子を好きになるかもしれないよね」
 男の子達は、一瞬黙って、牧野って結構大人な考えなんだな、ってボソボソやってる。
 わたしの隣で、桂さんが軽く息をついた。こういう話は全然興味ないのかもしれない。
「そんなことよりも、せっかく観覧車乗ったんだから、景色楽しもうよ。ほら、桂さん、見て! あっちの方ってわたし達の住んでるとこだよね。よく見えるんだなぁ」
 ゴンドラがちょうど一番高いところに来ていて、ライトアップされはじめた遊園地が綺麗。夕日に照らされた街がすごく綺麗。この景色を見過ごすなんてもったいなすぎるよ。
「……ほんとね」
 桂さんが笑った。男の子達も、今さらみたいに、おおぉ、って歓声あげてる。
 恋愛とか、憧れるのに変わりはないけれど、今はもうちょっとみんなと一緒にいろいろと楽しみたいって思うのは、子供っぽいのかな?
 ごめんね冴羽くん。しばらくは、お返事できそうにないよ。

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